しかし、改めて考えると新マップはもちろん、全く新しい「国」が実装されたのは、ヴァナ・ディール史上初めての出来事。発売前には「新エリアが追加される」という程度の漠然とした認識しか持っておらず、楽しみではあっても決して大きな期待をかけていたわけではなかったのですが、実際に足を運んでみると予想以上にワクワクしている自分がいました。
建築物やNPCの服装が醸し出す強い異文化の匂い。どこに何があるのかさえ分らない、立ち位置の喪失に対する不安と期待感。「この気分は何かに似てる…」と軽い既視感を感じているうちに、単純でストレートな答えに辿り着きました。それは「異国の地に立つ」ことのリアリティ。現実に海外で旅をしている時と共通した、あの感覚です。
ゲームの中では様々な世界を味わうことができます。でも、それはあくまで制作者のイマジネーションによって用意された「ステージ」。ほとんどの場合、頭の中では自然と「記号的な非日常性を楽しむ」という割り切った楽しみ方をするのが普通で、ヴァナ・ディールも例外ではありません。
ところが、マウラから満員の船に揺られ、不案内な皇都アル・ザビを徘徊していると、何度もリアルに「自分のテリトリーから遠い場所」に来た感覚を覚えずにはいられないのです。それは、旧知のヴァナ・ディールに漂い始めていた閉塞感とも無関係ではないでしょう。
ただ、いつまでも異邦人のままでいるわけにはいきません。とりあえずは、購入が不可能なエリアの地図を入手するクエストから始めようと思います。
浮き足立つような喧騒感に溢れた街から抜け出し、「さて、どっちへ行こうかな」と見上げた空には、見たことのない形の雲が流れていました。